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「原発集中立地県からみたエネルギー・原子力政策」(会議所ニュース12/1号)

(会議所ニュース12/1号掲載記事)

福井県は、合計15基の原子力発電所があり、日本で最も原発が集中している県である。原発集中立地県である福井県のこれまでの取り組みと、立地県から見た今後のエネルギー・原子力政策のあり方について、地元紙である福井新聞社の森瀬明・政治部長から解説いただく。

「原発集中立地県からみたエネルギー・原子力政策」

 福井新聞社 政治部長 森瀬 明 氏

 ⇒全文は、http://eco.jcci.or.jp/wp-content/uploads/2012/12/cci-news1201.pdfをご覧ください。

<要約>
◆伝わらない地元からの目線
 昨年3月の東京電力福島第一原発事故を機に、原発を取り巻く状況は一変した。今年5月には稼働ゼロとなった。そんな中、原発をめぐる諸問題を展望する上で試金石となったのが福井県の関西電力大飯原発3、4号機の再稼働だ。曲折の末に7月に再稼働したものの、国論が真っ二つに割れる中での政府の場当たり的な対応は、かえって原発の安全性や必要性に対する疑問、不信感を増幅する結果となった。2030年の電源構成をめぐる議論でも、最終結論を先送りしている。原発の位置づけや国策の根幹であるべきエネルギー戦略がこれまでいかにあやふやで、国民的合意を欠いていたかが浮き彫りになったといえよう。
マスコミの論調も「脱原発」「原発推進」に二分されている。原発の足元で暮らす住民や自治体が何をどう考え、戸惑い、悩みながらもどう判断を下そうとしたのか、等身大の姿が伝えられているとは言いがたい。半世紀にわたり原発に向き合ってきた立地県の地元紙としては、地域のリアルな日常を起点にしつつ、抽象論や観念論を排した原発の実相、エネルギーの現実を考えてこそ、問題解決につながっていくと考えている。
◆パイオニアとしての福井
 福井県内には、高速増殖炉「もんじゅ」、すでに廃炉作業に入っている新型転換炉「ふげん」という2基の研究炉を含め、15基の原発がある。国内最多の原発立地県であり、世界でも例のない集中立地地域だ。誘致・建設時から数えれば50年を超す「共存」の歴史がある。
多くの原発がいち早く立地したパイオニアだけに、老朽化・廃炉の問題にも全国に先駆けて直面する。一方で、敦賀半島では150万キロワット級の2基を増設する計画もある。プルサーマル、高速増殖炉は核燃料サイクルの根幹にかかわるし、国内の原発問題のあらゆる要素を抱えていると言っていい。また、日本の原発の歴史に残るような事故と、日常的な無数のトラブルも経験してきた。
原発の安全規制は本来、国が一元的に担うはずだが、実際には地元に軸足を置いた取り組みをしてきたとはいえず、国に代わって福井県は「住民の安心」を担保するための独自の監視体制を築いた。安全性確保の主導的な役割を果たしたのは、国より福井県の方であり、当事者としての自覚、能力を持っていたのは福井県といっても過言ではなかろう。
◆複雑な地元の思い
 集中立地県になった複雑な歴史を踏まえずに、再稼働をめぐって複雑に交錯する住民の心のひだは理解できないだろう。原発と隣り合わせで暮らす中で、住民や自治体は「絶対の安全」はあり得ないことを体験的に知っているし、その代償としての電源三法交付金などを通して豊かさを手に入れてきた。首長らは「国策に協力し、エネルギー供給を担ってきた」という強い自負と使命感を持っている。ただ、長い時間を経るうちに、立地地域の経済・雇用、財政が原発なしには成り立たない構造になってしまったのも事実。「依存体質」との批判も付きまとう。
供給地の苦悩と困惑と消費地の無関心という、地域ナショナリズムがぶつかり合うかのような消費地と供給地の対立は、原発・エネルギー政策についていかに多くの人が無自覚、無関心であったかを象徴していよう。
◆脱・二項対立、脱・思考停止こそ必要だ:国民的議論で納得できる合意点を
 再稼働をめぐって生じた問題の多くは、政府の「全体像なき暫定・部分対応」に起因している。また、立地自治体や住民も、既存路線にしがみつくだけではいられず、新たな現実を見据えた地域の将来像を自ら考えるべきときだ。これまで原発をめぐる政策論争では推進派、反対派の意見が相いれず、現実を見据えた柔軟な修正を阻んできた側面がある。「二項対立」はある意味で互いに「思考停止」ともいえ、脱却が必要だ。そのためには、さまざまなステークホルダーが同じ土俵に立って、本当の意味での国民的議論を交わし、多くの国民が納得できる合意点を探るべきではないか。

(参考)
▽「原発は嫌だ。でも値上げも嫌だ」論の愚昧(会議所ニュース11/21号)
http://eco.jcci.or.jp/news/6922.html
▽人々は「ゼロリスク」を本当に求めていたのか(会議所ニュース11/11号)
http://eco.jcci.or.jp/news/6816.html
▽原発再稼働の現場-大飯原発を例にして-(会議所ニュース11/11号)
http://eco.jcci.or.jp/news/6805.html
▽電力供給を支える現場力-関西電力海南発電所の苦闘-(会議所ニュース11/1号)
http://eco.jcci.or.jp/news/news_front/6718.html
▽「今冬のエネルギー動向に関するアンケート調査」札幌商工会議所(会議所ニュース11/1号)
http://eco.jcci.or.jp/news/6677.html

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