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活断層評価で議論呼ぶ原子力規制委と電力会社への注文(会議所ニュース3/1号)

2013年3月1日 金曜日

(会議所ニュース3/1号掲載記事)
日本商工会議所では震災以来、電気料金の上昇抑制と安定供給、安全性を確保した原子力発電所の再稼働が現下の最優先課題であると訴え続けてきた。遅きに失したとはいえ、昨年9月に原子力規制委員会が発足し、新たな安全基準の策定作業を進めていることは一歩前進である。しかし、委員会の動きにはマスコミ、有識者などから疑問の声も寄せられている。今回は、21世紀政策研究所の澤昭裕氏の執筆記事を紹介する。

活断層評価で議論呼ぶ
原子力規制委と電力会社への注文

 21世紀政策研究所 研究主幹 澤昭裕 氏

  ⇒全文は、https://eco.jcci.or.jp/wp-content/uploads/2013/03/cci-news0301.pdfをご覧ください。

<要約>
原子力に対する信頼回復は、政権交代によってもたらされるものではない。リスクを許容可能な水準に抑えて、原子力発電を最大限活用していくためには、規制を守れば十分という意識から脱却し、自律的に安全を追求する事業者と、ゼロリスクの罠にはまることなく、信頼性・効率性・実効性全てを満たすような規制活動を目指す規制当局の存在が欠かせない。最大の問題は安全性の確保だが、その鍵を握るのが、原子力規制委員会(以下、規制委)のパフォーマンスである。

◆一部の専門家では信頼性は保てない:信頼性、効率性、実効性が必要
 原子力への信頼回復と今後の持続可能な電源利用を実現するために必要なポイントは、規制委の規制活動に関して、(1)信頼性、(2)効率性、(3)実効性である。

(1)  信頼性…規制委の判断や評価については、規制委に属する専門家のみならず、委員会外部(海外を含む)の専門家の間でも、その妥当性について大きな疑義が生じることがない程度まで、文書で明瞭な根拠が示されることが必要だ。また、規制委と政府、そして事業者がどのような権限と責任をもつのかを明確化する必要がある。さらに規制活動のプロセスも、規制委が行うそれぞれの行為の法的根拠を明確にし、その判断や指示を全てきちんと文書化していくことが重要だ。さらに、安全基準への適合の審査について、現時点で全く明らかではない。本来、こうしたプロセスの具体化は、昨年規制委が立ち上がった後の第1の仕事たるべきだ。法の執行手続きの整備に時間とマンパワーを割いてこなかった姿勢は大きな問題である。

(2)  効率性…今後の原子力技術の利用に関する規制の課題は、リスクをゼロにすることを目的とするのではなく、リスク低減のために求める措置の強度やコストとリスクの低減度合いとの兼ね合いをどうバランスさせていくかにある。日本では、「ゼロリスクはありえない」ということを学んだにもかかわらず、むしろそれがゆえに、再稼働にむけてゼロリスクを要求する世論が強まるという逆説的な状況が続いてきた。規制委自身がゼロリスクの呪縛に囚われた規制活動を行っていないか、自ら顧みることが必要ではないだろうか。

(3)  実効性…安全審査や検査が、安全基準への形式的な適合性を確認することに重点が置かれすぎ、全体の安全性を実効的に確保する活動に努力が振り向けられるようなインセンティブ設計がなされていなかったという点が最大の問題である。規制当局は最低基準としての安全基準を策定することに止め、事業者がそれをクリアしたうえで自主的・自律的に、世界最高水準の安全性確保のためのハード・ソフトの両面での工夫を凝らしていくという関係を築くべきだ。原子力事業者側にも、自律的な努力による安全性向上が実現するような工夫を、自らの社内組織ガバナンスや人事評価システムに埋め込む事が必要だ。

◆信頼回復は関係者の真摯な努力で
 原子力に対する信頼回復は、福島第一原発事故の反省に基づく原子力安全性向上に関する関係者の真摯な努力によってのみ可能となる。事業者は、「規制を遵守すればそれで十分」という意識からどう脱却するかに真剣に取り組まなければならない。

(参考)
▽電力自由化論の致命的な欠陥(会議所ニュース2/11号)
https://eco.jcci.or.jp/news/7794.html
▽安全性を確保した原発の再稼働を(会議所ニュース12/11号)
https://eco.jcci.or.jp/news/7158.html
▽電気料金値上げ 中小企業に大打撃 各地から上昇抑制を要望(会議所ニュース12/11号)
https://eco.jcci.or.jp/news/7151.html
▽「夢」と呼ばれる日本の「革新的エネルギー戦略」と欧州・米国の現実路線(会議所ニュース12/11号)
https://eco.jcci.or.jp/news/7145.html
▽「原発集中立地県からみたエネルギー・原子力政策」(会議所ニュース12/1号)
https://eco.jcci.or.jp/news/7043.html

電力自由化論の致命的な欠陥(会議所ニュース2/11号)

2013年2月13日 水曜日

(会議所ニュース2/11号掲載記事)

 日本商工会議所は、電気料金の上昇抑制と安定供給の確保が喫緊の課題であると、東日本大震災以来、訴え続けてきた。電力小売りの全面自由化や発送電分離などの「改革」は解決策になるだろうか。「事実」に基づいて考えることが肝要である。今回は国際環境経済研究所の澤昭裕氏の執筆記事を紹介する。
 
電力自由化論の致命的な欠陥

 国際環境経済研究所 所長 澤 昭裕 氏

  ⇒全文は、https://eco.jcci.or.jp/wp-content/uploads/2013/02/cci-news0211.pdfをご覧ください。

<要約>
 昨年9月14日、政府は「2030年代に原子力発電所稼働ゼロ」を柱とする革新的エネルギー・環境戦略を定めた。同戦略では発送電分離などを含む電力システム改革を12年末までに断行するとしていた。これを受けて11月7日、経済産業省の「電力システム改革専門委員会」が再開され、電力自由化の方針を進めていくことが再確認された。しかし、今の電力自由化論議には抜け落ちている論点が少なくとも3つある。

◆原子力事業抜きの議論はありえない
 第一の論点は、「今後国は原子力事業にどう関与していくか」を明確にすることなくして、電力のシステム改革を進めることなどありえないはずだが、改革議論の射程からは完全に外されてしまっている。
 国の基準を守っていたからといって、原子力発電所事故を起こした電力会社は、その損害賠償責任を免れない。電力会社のみが無限責任を負う現行制度の下では、電力会社が原子力事業を継続することは、難しくなっていくだろう。
 電力改革の当事者となる電力会社にとってみれば、日本が国家として原子力を維持するのか、維持しないのか、確固たる政策的な決断なくして、発送電分離はもとより、そもそも自由化に向けての企業戦略をどう考えていくかや、自らの事業範囲をどう拡張していくかなど、基本的な経営方針を立てることができなくなってしまう。
 あるいは、今後も原子力を維持するというのなら、官民のリスクや負担の分担をどうするのか、その関連で原子力損害賠償法をどのような仕組みにするのかなど、国として答えを出すべき問題は山積しているが、いっこうに議論が進んでいる様子がない。
 仮に自由化が進めば、電力会社は競争にさらされコストダウンを要求される。電力システム改革専門委員会がいっているように、経済性を度外視してでも、安全性を重視すべきというなら、自由化による競争と原子力発電の維持を両立させることは非常に難しくなってくる。結局、現在政府で進められている自由化論議は、原子力発電の取り扱いやエネルギーミックスに関する選択肢など、本来であれば総合的に検討されるべき課題との関連づけが不明なまま、進められているというほかない。

◆小売り自由化はどうなるのか
 政府の自由化論議で抜け落ちている第二の論点は、小売りの自由化をどうするのか、である。これまでの改革論は、いかに電力会社の既得権を剥奪するかということに重きが置かれており、発送電分離や卸電力取引市場という供給サイドの話しかされていない。ところが、原子力発電所事故を契機に電力システムについて関心を持ち始めたユーザーは、家庭を中心とする小口ユーザーだ。しかし、小売り分野での政策が全く具体的に議論されていない。

◆災害時の対応に不安
 第三の論点は、発送電分離を含む自由化を進めた場合、災害が起こったときの対応について、かなりの不安が残る。自由化によってこれまでの事業者の法的な供給義務が外された場合、市場メカニズムによって需給調整を行なっていくことになる。自由化されて競争が激しくなると、どの電力会社も余分な発電設備を持たなくなる。
 政府の電力システム改革専門委員会は、「東日本大震災は、わが国の長年にわたる電力供給システムの持続可能性について大いなる疑問をもたらした」とする。しかし、東日本大震災によって、かえって日本の電力システムの強靭さが証明されたのではないか。

◆恣意的かつ強権的な介入につながる恐れ
 自由化の目的は、あくまで電力ユーザーに対する低廉かつ安定的な電力供給を確保するために行われるものでなければならない。自由化の看板の下に隠れて、「大事故を起こした電力会社を懲らしめなければならない」という政治的目的だけを追求するものになってはならない。
 そもそも「電力の自由化=電力料金が下がる」という図式は、発電設備が余っていて、それが有効活用されていない場合の話である。いまの日本のように、原子力発電が再稼働せず、設備余剰が少ない場合、自由化によって電気料金は上昇するはずだ。自由化による電気料金抑制には、原子力発電所の再稼働が前提になっている。それにもかかわらず、その時期も決まらないうちに、自由化の論議だけを進めるのは危険だというほかない。
 このように、政府が進める電力改革にはさまざまな疑問が生じるのだが、一方で既存の電力会社にも従来の殻に閉じこもっていることなく、大いに変革を促したい。

(参考)
  ▽安全性を確保した原発の再稼働を(会議所ニュース12/11号)
    https://eco.jcci.or.jp/news/7158.html
  ▽電気料金値上げ 中小企業に大打撃 各地から上昇抑制を要望(会議所ニュース12/11号)
    https://eco.jcci.or.jp/news/7151.html
  ▽「夢」と呼ばれる日本の「革新的エネルギー戦略」と欧州・米国の現実路線(会議所ニュース12/11号)
    https://eco.jcci.or.jp/news/7145.html
  ▽「原発集中立地県からみたエネルギー・原子力政策」(会議所ニュース12/1号)
    https://eco.jcci.or.jp/news/7043.html
  ▽「原発は嫌だ。でも値上げも嫌だ」論の愚昧(会議所ニュース11/21号)
    https://eco.jcci.or.jp/news/6922.html

「原発は嫌だ。でも値上げも嫌だ」論の愚昧(会議所ニュース11/21号)

2012年11月21日 水曜日

(会議所ニュース11/21号掲載記事)

 日本商工会議所では、原子力発電を含む多様な電源構成の維持の必要性を訴えている。「原発ゼロ」を掲げる人々は、それにより発生する影響を十分に認識しているのだろうか。今回は、21世紀政策研究所の澤昭裕氏の執筆記事を紹介する。

 「原発は嫌だ。でも値上げも嫌だ」論の愚昧

 国際環境経済研究所 所長 澤 昭裕 氏

  ⇒全文は、https://eco.jcci.or.jp/wp-content/uploads/2012/11/cci-news1121.pdfをご覧ください。

<要約>
◆政治家や官僚が「原発ゼロ」に向かう事情
 「世論」は、足りないものを強く求める傾向がある。エネルギー政策についていえば、福島原発の後は、まずは安全性、次は経済性(料金値上げ反対)だった。その世論に迎合する形で政府が脱原発を強行して、その結果停電が起こりそうだとなれば、今度は安定供給を求めるだろう。世論とはそういう移り気なものだ。足もとの世論の動向に左右されずに、エネルギー政策全般の整合性に目を配るのが、政治や行政の責任ではないだろうか。
◆何も決めずに先送りしたのと同じ
 政府のエネルギー・環境会議が定めた「革新的エネルギー・環境戦略」では、再生可能エネルギーを大量に導入するため、全量固定買取価格制度(フィードインタリフ=FIT)を運用し、政府予算も大きく伸ばすことが予定されている。しかし、これらの施策による電気料金や税金などの経済的負担がどの程度に国民に掛かってくるかは、明示されておらず、それを国民の前に提示するのは、今年末を「目途」として先送りされている。このような政策提示の仕方は、これまで見たことがない。さらに、再生可能エネルギー、特に風力と太陽光などは精緻に積み上げられた再生可能エネルギー開発計画があるわけではない。結局、この計画は「気合いの目標」でしかないのである。電力供給設備投資や省エネが実現できなければ、電力需給の逼迫は避けられない。その際には電気料金は高騰する。
◆国民経済や雇用の観点こそが重要だ
 日本に原子力発電が必要な理由は、量の安定供給の問題だけではなく、まさに国民経済や雇用の観点からなのである。地域経済の中枢を担い、これまで日本の製造業を支えてきた優れた技術を有する企業でも、血と汗がにじむコスト削減努力を不断に続けている製造現場からすれば、1%の電気料金のアップでさえ大きく響くのである。日本は国際的に電気料金が高いと言われながらも、原子力発電があって、何とかこれまでの電気料金でやってこられた面もある。結局、肝心要の議論は、原発を止めることでどこまで日本経済がもつか、なのである。
◆革新的な技術開発が進まない恐れ
 再生可能エネルギーの導入を促進するために、7月からわが国に導入されたFITだが、この制度は問題が多い。第一の問題点は、ユーザー負担があまりに高すぎることだ。法律上、導入後3年間は、事業者の利益が実質的に保証されることになっていることもあり、買い取り価格はロビイングしていた側でさえ驚くほど有利なものになったといわれている。第二の問題点は、この制度では革新的な技術の開発が進まない、ということだ。仮に極めてチャレンジングな研究開発に取り組んだとすれば、それが実用化される数年先には買い取り価格は下がっているだろうから、その投資は回収できないのである。さらに、同じ太陽光発電事業者間での競争もないため、自らコストダウンのための技術開発をしようという気になるはずがない。
 再生可能エネルギーは質、量、コストのいずれの面でも未熟な段階にある。開発や実用化への挑戦自体は歓迎だが、根拠もなく過度の期待を抱くのは危険な賭けというほかない。
◆ファイナンス問題
 東日本大震災で明らかになったのは、国の基準を守ったからといって、原発事故を起こした電力会社はその損害賠償責任を免れないということだ。電力会社のみが無限賠償の責任を負う現行制度のままでは、ファイナンス面の問題が生じ、電力会社への民間投資や融資は停滞してしまうだろう。設備産業である電力会社は、資金調達が行き詰まれば、新規の発送配電設備や関連情報システムに必要な投資を行なうことが困難になる。もちろん、原子力事業を継続することも難しくなってくるはずだ。

(参考)
  ▽人々は「ゼロリスク」を本当に求めていたのか(会議所ニュース11/11号)
       https://eco.jcci.or.jp/news/6816.html
    ▽原発再稼働の現場-大飯原発を例にして-(会議所ニュース11/11号)
     https://eco.jcci.or.jp/news/6805.html
  ▽電力供給を支える現場力-関西電力海南発電所の苦闘-(会議所ニュース11/1号)
     https://eco.jcci.or.jp/news/news_front/6718.html
  ▽「今冬のエネルギー動向に関するアンケート調査」札幌商工会議所(会議所ニュース11/1号)
     https://eco.jcci.or.jp/news/6677.html
  ▽電機と電気―経営と生活(会議所ニュース10/21号)https://eco.jcci.or.jp/news/6597.html