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「夢」と呼ばれる日本の「革新的エネルギー戦略」と欧州・米国の現実路線(会議所ニュース12/11号)

2012年12月13日 木曜日

(会議所ニュース12/11号掲載記事)
シェールガスの開発が進めば、天然ガスの価格も大幅に安くなり、原発に依存しなくても良いという人がいる。はたして本当に正しいのだろうか。欧米のエネルギー事情などを富士常葉大学の山本隆三教授に解説いただく。

「夢」と呼ばれる日本の「革新的エネルギー戦略」と欧州・米国の現実路線

 富士常葉大学総合経営学部教授 山本 隆三 氏

 
 ⇒全文は、https://eco.jcci.or.jp/wp-content/uploads/2012/12/cci-news1211c.pdfをご覧ください。

<要約>
○海外の主要マスコミは、「革新的エネルギー・環境戦略」を実行可能な選択肢とは見ていないようだ。
○環境、エネルギー問題の専門家と言われる人でも、欧州の事情の誤解に基づく主張をする。日本のエネルギー戦略を考える際には、欧米のエネルギー事情などの世界情勢を踏まえる必要がある。
○なぜ、欧州では天然ガスの消費が減少し、石炭消費が増えているのだろうか。それは、米国で開発が進むシェールガスが欧州のエネルギー供給にも大きな影響を与えているからだ。実際に天然ガス価格が下落しているのは、米国だけだ。欧州では、シェールガス生産が本格化しておらず、ガス価格も全く下落していない。それは原油価格にリンクしているからだ。日本の新聞、テレビの報道では、シェールガス革命によりあたかも世界中の天然ガスの価格が下落しているように伝えられているが、誤解である。
○米国ではシェールガスの生産増により、石炭の国内消費が減少した。国内の需要減を補うため、米国の多くの石炭会社が欧州向けに輸出攻勢をかけている。排出枠の価格も低迷しており、欧州企業は、安い石炭を購入し、二酸化炭素排出量の増える分排出枠を購入する。温暖化問題よりも経済性を重視しているといえる。
○米国は、シェールガスとシェールオイルの生産増により、中東、ベネズエラへの依存度低減は確実に実現されそうである。米国の中東での存在感が薄れ、不安定化が増すと、原油価格に大きな影響を与える可能性がある。 原油価格が上昇した場合には、天然ガスも石炭の価格も上昇する。脱原発を目指し、原子力というオプションを日本が失っていたなら ば、化石燃料の中で多様化を図っていたとしても、欧米諸国以上の打撃を日本だけが受けることになるだろう。
○欧米の再エネ関連企業が中国企業に追いつめられている状況をみると、グリーンビジネスによる経済成長は実現性に疑問がある。

※これは、2012年11月22日付ウェッジ・インフィニティに掲載された記事を、株式会社ウェッジの許可を得て転載したものです。 

(参考)
  ▽「原発集中立地県からみたエネルギー・原子力政策」(会議所ニュース12/1号)
     https://eco.jcci.or.jp/news/7043.html
  ▽「原発は嫌だ。でも値上げも嫌だ」論の愚昧(会議所ニュース11/21号)
     https://eco.jcci.or.jp/news/6922.html
  ▽人々は「ゼロリスク」を本当に求めていたのか(会議所ニュース11/11号)
       https://eco.jcci.or.jp/news/6816.html
  ▽原発再稼働の現場-大飯原発を例にして-(会議所ニュース11/11号)
     https://eco.jcci.or.jp/news/6805.html
  ▽電力供給を支える現場力-関西電力海南発電所の苦闘-(会議所ニュース11/1号)
     https://eco.jcci.or.jp/news/news_front/6718.html

「エネルギー・環境に関する選択肢」への意見を公表(中経連)

2012年8月9日 木曜日

 一般社団法人中部経済連合会(中経連)はこのほど、「エネルギー・環境に関する選択肢」への意見を取りまとめ、公表した。意見書では、政府の「選択肢」で示されたシナリオの前提条件について、先月閣議決定した「日本再生戦略」で目指す経済成長率より低い数値でエネルギーの需要予測を行っている点や、省エネ・再エネの目標値が「現実感を欠く」点を問題視。各シナリオとも、2030年のGDP が、自然体ケースと比べ低い水準に止まると予想しており、「電力価格の大幅上昇、家庭における可処分所得の減少のみならず、製造業においては海外移転が加速し、国内雇用の維持に深刻な影響が生じる」として、「いずれのシナリオも、エネルギーの安定・安価・安全な供給という国民・産業の期待に応えるものではない」との見解を示すとともに、「十分な情報・実現性の高い見通しの提示と時間をかけた検討を願う」と政府に注文を付けている。
 政府の示すシナリオに対する疑問・批判が各方面から巻き起こっている。シナリオの前提条件や根拠が不明確な数字を使用している点など、首をかしげる内容が数多く含まれているためだ。示された3つのシナリオの前提となった実質経済成長率(1.1%/年)と、日本再生戦略が目指す成長率(2%/年)とが矛盾している点は、7月18日に日本商工会議所が公表した意見書でも指摘。今後、日本再生戦略を展開すれば、エネルギーが足りなくなることは明らかであり、整合性に欠ける。日本再生戦略で成長のシナリオを示していながら、3つのシナリオでは、どのシナリオも電気代、ガソリン代の大幅な上昇や成長率の低下、失業者数の増加など国民生活と産業、雇用に大ダメージを与えることを前提にしている。
 再生可能エネルギーの急速な導入も実現可能性は極めて低い。再生可能エネルギーの比率を35%にするために、2030年までの18年間、日本最大級のウインドファーム相当の風力発電所を毎年30カ所建設し、毎年1000カ所のメガソーラーを設置し、住宅1000万戸に太陽光パネルを設置しても、まだ電力は足りないことから、太陽光パネルの設置不可能な住宅200万戸には、強制的に改修を義務付けるという内容も含まれているから驚きだ。再エネ導入に伴って必要となるバックアップ用の火力発電所の建設等のコストは示されていないという問題もある。送電等に必要な系統対策コストについては、6月19日にゼロシナリオで21兆円、15シナリオで12兆円と試算していたものを、10日後の6月29日にはゼロシナリオで5.2兆円、15シナリオでは3.4兆円として発表。その試算の根拠は未だに示されていない。
 非現実的な省エネルギーの前提にも問題が多い。ゼロシナリオでは、住宅を新築・改築する際には最高効率の省エネ住宅しか認めない、自動車も最高効率の省エネ車以外は市街地への乗り入れ禁止など厳しい使用制限を設ける、既存の石油ストーブやガスストーブは販売禁止、厳しい省エネ基準に適合しない古いアパートやマンションの賃貸は禁止する、などの国民生活に多大な負担を強いる極端な省エネを前提としている。
 日本商工会議所では、今回示された選択肢はいずれも実現可能性に乏しく、安定供給、エネルギー安全保障、コスト・経済性を軽視していると指摘。3~5年先、10年先の電力供給の見通しなど時間軸を示し、2030年に至るプロセスを示すとともに、再生可能エネルギーと省エネルギーについては、国民負担の許容範囲を含め現実的な目標を立てるべきとしている。
 詳細は、http://www.chukeiren.or.jp/news/pdf/20120808.pdfを参照。

   話そう「エネルギーと環境のみらい」http://www.sentakushi.go.jp/
   国家戦略室http://www.npu.go.jp/
   日本商工会議所http://www.jcci.or.jp/news/jcci-news/2012/0718183959.html
   経済同友会http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2012/120808a.html
   日本経済団体連合会http://www.keidanren.or.jp/policy/2012/057.html
   日本鉄鋼連盟・日本基幹産業労働組合連合会http://www.jisf.or.jp/news/topics/120620_2.html
   日商環境ナビhttps://eco.jcci.or.jp/